近年、感染対策の重要性が増しており、それによって消毒に対するニーズが広がっています。
しかし、これまで消毒効果の高い消毒剤は、刺激性や毒性が高くなる傾向がありました。
消毒剤として、最も身近で消毒の効果のあるアルコールも刺激性があり、人によっては肌に影響があります。
このような状況から低刺激かつ効果の高い消毒剤へのニーズが高まっており、現在、次世代の消毒成分であるPHMBが注目されています。
今回はそのようなニーズを満たしてくれる次世代の消毒液であるPHMBが、どのような特性を持っているのか、またそれを活かしてどのように活用されているのかについて解説します。
PHMBは“ポリヘキサメチレンビグアナイド”という物質の略称です。
ウイルスや細菌を除去する消毒液として30カ国以上の国で使用されています。
非常に幅広いウイルスや細菌類に対して有効で、さらに安全性が高いことが知られており、様々な用途に使用されています。
まずは、PHMBはこれまでの消毒液と、どのような違いがあるのかみていきましょう。
PHMBには非刺激性で独特の臭いがないという特性があり、なおかつ消毒効果が高いため、「十分な消毒効果がほしいけど安全性もしっかりと確保したい」という場合に非常に有効です。
また、皮脂や汚れがある場所でも消毒効果が落ちません。
水分がある場所でも十分な消毒効果を発揮するので、水回りなどのアルコールではなかなか十分に消毒することができない場所であっても高いパフォーマンスを発揮することができます。
なお、アルコールなどの従来の消毒液で問題になるのが設備やパッキンなどを痛めるという点です。近年新型コロナウイルス感染症が流行した影響で、透明なアクリル板でできた仕切りを使用しているオフィスや店舗が多くなっていますが、このアクリル板をアルコールで消毒するとアクリル板が白く濁ったり割れたりすることがあります。
しかし、PHMBはアルコールと異なり、アクリル板の消毒に使用してもアクリル板を痛めないという特性があるのです。このように次世代の消毒剤であるPHMBは従来の消毒剤にはない特性があり、その特性を活かした様々な用途で使われています。
では、どのような用途に使われているのかみていきましょう。
PHMBはその高い消毒効果と、安全性の高さから多くの国で確実な工業用の消毒剤として使用されています。
大きな用途の1つとして、PHMBは食品加工工場の消毒を行う際の消毒剤として使用されることがあります。人の口に入る食品を加工する工場ですので、当然ながら高い除菌力が必要となります。たとえ、高い除菌力のある消毒剤であったとしても人体の害になったり、刺激性が強かったりする消毒剤は、食品加工工場では使用できません。高い安全性と消毒性能を兼ね備えているからこそ食品加工工場の消毒にPHMBは使用できるのです。
2つ目の用途として、遊園地などの水のかかるアトラクションでずぶ濡れになってしまった経験がある方は多いと思われますが、このアトラクションの水の消毒にもPHMBが使われていて、水中でも消毒を確実に行うことができます。
アトラクションなどは多くの人に水がかかるため、刺激性がある消毒剤を使うと人によっては過敏症を起こしてしまう場合があります。そのため、アトラクションで水がかかっても大丈夫なのはPHMBが人体に害を与えずに、消毒性能を発揮しているおかげでもあるのです。
3つ目はPHMBの高い安全性を示す使用例として、コンタクトレンズの洗浄液への使用があります。
コンタクトレンズは目に入るものなので、汚れていると目の表面の角膜を傷つけてしまいます。また、細菌などが目に入ると傷ついた角膜から細菌が侵入して細菌性角膜炎になってしまいます。先進国の角膜性細菌症のリスク因子のトップはこのコンタクトレンズからの感染です。それだけにコンタクトレンズを確実に消毒することは重要です。そして当然目に入れるものなので害がないだけでなく、刺激がないことが重要になります。
これらのことから、PHMBは目に入れても痛くないほど刺激が少ないということがわかります。
その他にも、私たちの身の回りをふいたり除菌をしたりするために使用するウェットティッシュやスプレーにもPHMBが使われております。
あまり耳馴染みのない物質でありながらも、実は私たちの身の回りで活躍している成分なのです。
これまで多くのPHMBの用途についてふれてきました。PHMBの他の消毒剤にない優れた特性により、非常に重宝されていることがわかるかと思います。
また、このPHMBは、家庭用としても手に入れることが可能です。
私たちの日常生活のなかで、家庭内ではPHMBの特性がどのように役に立つのかについてみていきましょう。
まずPHMBは家の中のあらゆる場所に使用することができます。前述したようにアルコールは手に入りやすく安価なのですが、刺激性があり、アクリル板を傷めることがあるため、使用する際は気をつける必要があります。
しかし、PHMBは、脱色や金属腐食の危険性が他の消毒剤に比べると少ないという特徴があるので、様々な場所の除菌に活躍します。
例えば布や木製品など、脱色の可能性があるようなものは消毒を少し躊躇してしまうと思いますが、PHMBなら脱色性がなく、また腐食させにくいという特性があるので多くのものに使用することができます。
ただし、水分を含んでいて水ジミになる可能性のある革製品や絹といったものには、注意が必要です。全ての製品が全く脱色しないというわけではないので、大事なものを消毒する時には1度目立たない場所に消毒液をつけてみて水じみや変色などのトラブルがないかを確認してから使用を開始するようにしましょう。
また、アルコール消毒を子供や赤ちゃんの触るものに対して使用してもよいか悩む方が多いかと思いますが、PHMBは非刺激性で人体に悪影響を与えにくいため、使用することができます。なお、免疫がまだしっかりしていない子供や赤ちゃんにとっては周りの環境をしっかりと消毒してあげることが重要です。
さらにPHMBは、トイレや浴室の除菌にも活躍します。
アルコールは濃度が一定以上でないと消毒効果が弱まってしまうので、70%程度の濃度が消毒効果をあげるためには必要ですが、トイレや浴室などの水に濡れた場所にアルコールスプレーなどをしてもすぐに濃度が下がってしまい、十分な効果を発揮することができません。
しかし、PHMBであれば水の消毒にも使われているので、水場であってもその消毒効果をしっかりと発揮することができます。
また、キッチンには消毒したくなるようなものがたくさんあるので、それらにしっかりと消毒効果が発揮できるPHMBがあると掃除がとても楽になります。
近年、新型コロナウイルス感染症が流行したことで、マスクをつけての生活が長くなっていますが、そのマスクの消毒にもPHMBは有効です。アルコールのスプレーなどでマスクの消毒をするとツンとしたりアルコールに弱い人は気分が悪くなったり、場合によっては皮膚に影響が出てしまうことがあります。
しかし、PHMBのスプレーであれば非刺激性で無臭のため、悪影響なくマスクの消毒に使用することができるのです。
今回は新世代の消毒剤であるPHMBの特性とその特性を利用した使用法について解説しました。これまでの消毒液にはない優れた特性をたくさん持っているPHMBは、多くの場所で使われています。
また、私たちの日常生活の中でも、活躍する場面がたくさんあります。
特に近年は新型コロナウイルス感染症の影響から消毒に関するニーズが高まっています。PHMBをうまく活用して、感染症などから身を守りましょう。