近年、日本は高齢化が進んでいます。1950年には65歳以上人口は総人口の5%にも満たなかったのが、2019年には28.4%となっております、今後も高齢化は進んでいくと予想されており、さらに高齢者が多い社会になっていくことと思われます。
そのような中で、単に生きている期間である寿命を伸ばすだけではなく、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間「健康寿命」を伸ばしていくことがより重要になってきます。
この健康寿命を伸ばすためには多くの日本人がかかっている疾患を防ぐような生活習慣を身につける必要があります。
日本人の死因の1位は「癌」であり、この癌を防ぐことが健康寿命を伸ばすのに必要です。そこで今回はこの癌を抑制する効果があると言われている成分「フコイダン」についてその歴史や優れた効果、フコイダンの取り入れ方を解説します。
フコイダンはモズクやコンブなどの海藻類の滑り成分の一種です。このフコイダンは1913年にスウェーデンの科学者H・Z・キリンによって発見されました。
成分として発見される前から海藻類は健康に良いということは経験的に知られていたようで、古くは2000年以上前から秦の始皇帝がコンブを不老長寿の薬として用いていたと言われています。
フコイダンが成分として発見されてから、多くの科学者がその特性について研究を行い、抗凝固作用や抗ウイルス作用を持つことが発見されました。1996年には日本癌学会でフコイダンが癌の細胞に対して細胞死させる作用(アポトーシス効果)を持つことが発表され、日本でもフコイダンという成分が広く認知されるようになりました。
フコイダンは抗癌作用のある成分として現在も研究が進められており、その優れた特性について少しずつ解明されてきています。
フコイダンの構造は概ね分かっていますが、細かい構造の解明はまだできていません。そのため合成をすることはできず、海藻などから抽出したものを使用しています。
その際に一緒に抽出される色素成分などの生理作用も合わさって様々な効果をもたらします。低分子のものの方がより効果があるということがわかっています。
効果として分かっているだけでも抗凝固作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、抗癌作用といった様々なものがあります。ただしフコイダンの構造と効果のメカニズムはまだ不明な点が多いです。
フコイダンの健康効果については様々な論文が出ています。どのようなものか見ていきましょう。まず癌の抑制についてですが、担癌マウス(体に癌があるマウス)に対してメカブから抽出されたフコイダンを投与した場合と投与していない場合を比較しています。
その結果としてフコイダンを4日間投与したマウスは未治療のマウスと比較して生存期間が延長したことが分かっています。フコイダンは癌細胞を攻撃する免疫細胞の1種であるN K細胞の働きを増強しました。
また、免疫の司令官の役目を果たすT細胞が生産する物質であるインターフェロンγの量を2倍に増加させました。IFNγ免疫に関係する様々な細胞の活性化、増殖、分化に関わっています。つまり体の免疫を活性化し、癌の増殖を防ぐことで癌を持つ人の寿命を伸ばす可能性があることを示唆しているのです。
日本補完代替医療学会雑誌にはガゴメコンブ由来のフコイダンの健常成人免疫機能への有効性並びに安全性の評価と題する論文が掲載されています。
健康な成人男性の免疫機能に対する有効性を調べるために30人の被験者をフコイダン200mgを含む食品を摂取する群と、含まない食事を摂取するプラセボ群の2群に分け、それぞれの群で全血液細胞におけるサイトカイン(侵入した病原体に応答して産生され、免疫細胞を刺激、動員、および増殖させる物質)の生産能力を比較しています。
この実験の結果プラセボ食品を摂取した群ではさサイトカインを産生する能力は低下が認められましたが、フコイダンを含有する食品を摂取した群ではその低下が抑えられ、特にインターフェロンγなどのT細胞由来のサイトカインにおいてその作用が目立ちました。
また、血液検査や尿検査を確認した限りでは特に医学的に問題となるような症状は認められず、有害事象も認められませんでした。この結果からフコイダンは健常者の免疫機能の低下の予防や維持に有効であり、かつ安全な食品であるということが示唆されています。
フコイダンは便秘の改善にも効果があります。鳥取大学の研究でフコイダンを摂取した人とプラセボを摂取した人を比較するとフコイダンを摂取した群では排便日数の増加が見られました。また便の性状から腸内環境が改善していることが示唆されました。
フコイダンは食物繊維として作用するため、便の量を増したり、腸内の善玉菌の栄養源となり腸内環境を改善することでこのような作用を発揮したと思われます。
様々な研究がフコイダンの健康効果を支持しており、健康日数を伸ばすのに有効であることが明らかになってきています。
素晴らしい効果を発揮してくれるフコイダンですがどのように摂取できるのでしょうか。これまで説明してきたようにフコイダンはモズク、コンブ、ワカメ、メカブといった海藻類に含まれるので海藻類を多く取ることで摂取することができます。
しかし、出汁など煮込んでしまうと煮汁の中に溶け出てしまいますし、乾燥して戻したものもはほとんど含有していないことが分かっています。
モズク酢のような乾燥させたり煮込んだりしていないかたちで摂取するのが効果的であると考えられています。
1日に必要とされているフコイダンの量はおおよそ1000mgと言われており、モズクスでは1パック程度に当たる40gに相当します。そのため毎日1パックののモズク酢を食べるのが食品からの摂取としてはおすめになります。
モズク酢を毎日食べるのはちょっと・・・という方にはサプリメントが有用です。またサプリメントでの摂取はメリットもあります。外食などをした日でも取りやすいこと、移動先でも気軽に持って行けることなどですが、最も大きな利点としては人体に吸収されやすい形になっているというところです。
この吸収されやすいというメリットは低分子フコイダンを使用したサプリメントで得られるメリットになります。フコイダンは低分子のものほど吸収されやすいという特徴があるのでサプリメントを選ぶ際にはなるべく低分子のフコイダンを含有するものを選ぶようにするとより効果を得られます。
食事にも取り入れながら必要な時はサプリメントを賢く利用してフコイダンの持つ健康効果を利用していきましょう。
今回は海藻に含まれる健康成分であるフコイダンの効果について解説し、現在発表されている様々な論文を見ながらフコイダンがどのような作用を持っているのかをみていきました。
フコイダンは体を健康に保つために重要な働きをしている免疫細胞を活性化させることで体を健康に保ち、癌を抑制する効果を発揮します。
海藻を食事に取り入れたり、サプリメントをうまく活用したりして手軽に摂取することのできる成分でもありますので、健康寿命を伸ばすためにぜひ活用してみてください。